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3 喘息の治療 3)ステロイド薬 ステロイドが喘息に対して効果があることは以前からよく知られておりました。しかし以前は副作用を考慮して、ステロイドの使用をできるだけ控える傾向にありました。 近年、喘息の病態は気道の炎症であることが明らかになり、最も抗炎症作用の強いステロイドが喘息治療に積極的に使われるようになってきました。さらに経口ステロイドに比べて副作用がはるかに少ない 、吸入ステロイド(ICS, inhaled corticosteroid)の有効性が明らかになったことも、喘息治療にステロイドを積極的に使うようになった理由の一つになっています。 また、確実な抗炎症効果を得るために、吸入ステロイド(ICS)に求められることは、 @粒子径:炎症の場所に効率よく到達すること A親水性:炎症の組織に効率よく取り込まれること Bエステル化:炎症の細胞に長く留まること などが考えられています。この3つの特性が吸入ステロイドがステロイド受容体と複合体を作り、効率よく核内に入り込み、長時間作用を持続して高い抗炎症効果を発揮するために重要と考えられています。 ■作用機序 ステロイドには多くの作用がありますが、気道炎症に対する抗炎症作用ではT細胞、マスト細胞、血管内皮細胞、気道上皮細胞などの種々の細胞のサイトカイン産生の抑制作用やマスト細胞、好酸球減少誘導作用が主な作用になります。血管透過性抑制作用や粘液分泌抑制作用も認めております。 ■種類 日本にはベクロメタゾン(BDP)、フルチカゾン(FP)、ブデソニド(BUD)の3種類の吸入ステロイドが使われていましたが、2007年にシクレソニド(オルベスコ)が承認され、薬剤の選択の幅が広がってきました。 吸入機には @加圧式ガスによる定量噴霧吸入機(pMDI、metered dose inhaler) A自分の吸入力によるドライパウダー吸入機(DPI、dry powder inhaler) の2種類があります。加圧式ガスは以前はフロンガスを使っておりましたが、発売中止となり、代替フロンガス(HFA)を基剤とする者のみ使用されております。6歳以上の小児であれば、ドライパウダーを上手に吸入することができます。乳幼児がドライパウダーをうまく吸入できない時にはマスク付き吸入補助具(スペーサー)を使うことによって肺内に薬剤を吸入することができます。
小児に可能なpMDIはフルタイドエアーとキュバールがあります。臨床的には同等の効果があると言われております。スペーサーを使っても吸入が難しい乳幼児にはネブライザーを使って液体のパルミコートを吸入させます。 最近ではフルチカゾンと長時間作用型β2刺激薬であるサルメテロールの配合剤、アドエアが臨床的にはよく使われています。配合剤によって吸入回数が減ることで治療をシンプルにして、コンプライアンスを高める目的もあります。 海外ではアドエアのほかに、ブデソニドとファルモテロールの配合剤であるシンビコートがすでに臨床的に使われています 。2010年1月から日本でも承認され、その薬効が期待されています。 専門的な話になりますが、American Association for Respiratory Care(AARC)が発表したAerosol Consensus Statementでは、薬剤粒子径と気道到達率について言及しており、気道に到達するためには2-5μm、末梢気道から肺に到達するためには0.8-3μmであるとしている。 5μmを超える粒子の場合は口腔や咽頭への沈着率が高くなり、0.8μmより小さくなる場合には呼吸で外へ排出されてしまう。そのため、2-3μmの粒子が最も効率よく中枢から末梢の気道へ到達すると考えられています。 ■副作用 吸入ステロイド(ICS)の全身性の副作用は、注射剤や経口ステロイドと比べてはるかに少ないと言われております。ステロイドでは視床下部、下垂体、副腎機能の抑制、骨粗鬆症、白内障、緑内障などが問題となります。吸入後に必ずうがいをして、全身への吸収は極力少なくする必要があります。うがいはカンジダなどの口の中の感染症や咳などの副作用の予防にも大事になります。
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